肉親との関係を他人にとやかく言われる必要はないが、夫婦間くらいでは心の内を話せるようにしておいた方がいいかなって思うんだよね。
昨日の午前中は宿直明けで脳が働いておらず、正直昼間の記憶はほとんどない。
印象に残る出来事があったのは、夜だった。
妻とのいつもの通話で、妻が自分の父に対する想いを打ち明けてくれた。
これまで義母に対し、不遜な態度を取ったり、望まない生活を強いてきた義父に厳しい気持ちでいてしまうこと。
それなのに、還暦を迎え、突然しおらしく感謝の気持ちを伝えてくる父に少し嫌悪感を抱くこと。
どれもよくわかる。これまで妻が話してきてくれたからだ。
しかし、僕の想いは少し違った。
齢90を越える僕の父親は、遺された母に、先に逝くであろう自分が何も残せないことをひどく後悔していたことがあった。
それまで僕は父に対し、どうしようもない人だな、という印象があったのだが、この日を境にがらりと印象が変わった。
20代前半のある時、僕は自分に子供が出来たときにおじいちゃんの話が出来ない大人になりたくないと思ったことがあって、父親の生き様を聞かせてもらったことがある。
その日からは、父親というよりは一人の人間として認識し、どういう人なのかを少しでも理解出来た気がした。
そこからは、親に対して理不尽に感情をぶつけるようなことは全くしていない。
なぜなら、どんな人なのかを分かってきたし、彼らも人だ。どうしようもなくて当たり前なのだ。
そこから数年が経ち、おもむろに父から呼び出しがあった。
「一緒にある窓口まで連れて行ってほしいんだ。」
そこは年金機構の窓口だった。父は自分が逝った後、母に残せる年金がどれくらいあるか調べたかったようだ。
色々な背景があり、実はそんなに金額がないことを知った。
それを知った父は、これまでに見たことがないような表情で言った。
「俺は、お母さんに何も遺せないのか…。」
衝撃的だった。言葉の重みがすさまじかった。
僕はこの日の父の顔を絶対忘れない。お願いだからそんな悲しい顔をしないでくれ。
「僕らがいるじゃんか。そんなこと言わないで。」
とそれしか言えなかった。
これから父親になるからこそ、あの時この言葉が言えた自分を褒めてあげたい。
親だろうとなんだろうと、歳を取り過ぎてしまうと取り返せないものがある。
もうそこには後悔しかなくなってしまう。本当にどうしようもないのだ。
だけど、間違いなく父は母と愛を紡いでいった。その先に僕らが生まれた。
子供というのは希望であり、未来であり、宝物だと思う。
僕はこのことを妻に伝え、二人で泣いた。
義父は僕の父よりずっと若い。まだ取り返せる時間がある。
子供が親に許せないことがあるのは仕方ないし、悪いこととも思わない。
だけど、許せるうちに許しておかないと、後悔しか出来なくなる。
義父にも妻にもそんな思いはしてほしくない。
妻も別に義父を嫌いになったわけではないだろう。
思うところはあっても、それは当たり前だと思う。
だけど、僕や僕の父よりはずっと後悔しない選択が出来ることに違いはない。
僕にとって妻はもちろん、義父も大事な家族。
幸せを願って当然じゃないか。
ももも、マリモ7号でした。
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